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死体鑑定医の告白!闇に葬られかけた事件の真相を解き明かす!

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事故死、他殺そして自殺。日本中で発生する様々な変死事案。中でも死体の死因がわからず捜査の難航する事件で活躍するのが、監察医。彼らは、死体を入念に調べ上げ、死者の声なき声を聞くことで事件の真相を暴き出す。

そんな監察医の中で伝説と呼ばる男がいる。元東京都監察医務院長・上野正彦。彼がこれまで見てきた死体は、およそ2万体。今なお、死体の鑑定依頼が相次ぐ超エキスパートだ。

 傷害致死事件の真相

上野が昨年執筆した「死体鑑定医の告白」。ここには彼が、その鋭い観察眼で解決した数々の事件が書かれている。たとえば…一人息子を亡くした母親からの手紙だった。

2年前のこと、些細な言い争いから彼女の息子が、知り合いのMから一方的な暴行を受けた。倒れた彼は、胸をMに1度踏みつけられた。その結果、心臓と肺が損傷し死亡してしまったのだ。しかし、Mに下った判決は傷害致死の懲役3年。殺意なしとされ、殺人罪は認められなかった。

「息子は体中アザだらけでした。Mは殺意を否認していますが、私たちは明らかにMに殺意があったとして訴えるつもりです。そこで、息子の死体を再鑑定してほしいのです」

母親の痛切な願い、上野はじっくりと死者の声に耳を傾けた。検死写真を見ながら(息子さんは倒れた後に完全に意識を失っているな)。

上野がまず目をつけたのが、後頭部付近にあった逆U字型の損傷。これは仰向けに倒れた際、駐車場の石で頭を打った時にできたもの。一般男性の脳の重さは、およそ1400g。だが被害者の脳は、見つかった時1650gもあった。これは強い衝撃で脳が揺さぶられ、激しい脳震盪が起きた証拠。脳内の血液が循環せずに膨張し、被害者は意識を失ってしまったのだ。

資料によると、被害者は肋骨が8箇所も折れ心臓にも損傷があった。もし意識があれば抵抗するため、ここまで胸が損傷することなどない。(意識をなくして無抵抗の被害者の胸を思い切り踏みつける。これは人を死に至らしめる行為であることに間違いない)

この手紙から1ヶ月後、母親の代理で弁護士がやって来た。

「たしかに先生のおっしゃる通り、被害者は意識を失くしてから胸を踏まれた可能性が高いですね。ただ裁判では、加害者が被害者の胸を1回しか踏んでいいないと供述したことで、殺意がないと判断されました。何度も踏んでいる可能性は?」

「残念ながら1回の外的作用で、死因に至る胸の損傷が生じた可能性が高いです」

「そうですか…」

「ただ、1回しか踏みつけてないから殺意がなかったと考えるのは間違っています」

「えっ(;゚Д゚)!」

殺人事件などでよく出てくるメッタ刺し。一般的にこれは強い殺意からくる行為だと言われている。しかし、2万回の死体の声を聞いてきた上野はこう語る。「これは弱者の犯行だ」と。メッタ刺しは、抵抗や反撃を恐れた犯人が、その恐怖のあまりついやってしまう行為。つまり、殺意から生まれる行動ではない。

逆に強い殺意がある場合は急所を狙うことが多く、死体に致命傷は1箇所しかできないのだ。今回の事件も、心臓を1度だけ踏みつけている。つまり十分に強い殺意があった証拠なのだ。

「本件は殺意を持って暴行した。そう考えるのが正しいと思います」

この上野の再鑑定が決め手となり、1年後、警察は殺人として捜査を再開した。

不審な傷

ある日、知人男性2人が夜釣りに出かけた。しばらくして、Aが近くの自動販売機にジュースを買いに行ったのだが…。15分ほどで現場に戻ってみるとBが海に浮かんで死んでいたという。警察の調べでは、Bは岩場を移動中、足を滑らせて前のめりに転んで頭を強打。そのまま意識不明になり、海で溺れたという事故死。

しかし、運送会社の社員だったBには、会社を受取人として1億円の生命保険がかけられていた。そしてその運送会社は、多額の負債を抱えていた。Bの死因を怪しんだ保険会社の弁護士が上野に相談にやってきたのだ。

「被害者が見つかった時、どんな状態でしたか?」

「水深約30cmの海面で浮いた状態で発見されました」

「浮いていた?それはおかしいな」

「えっ(;゚Д゚)!」

一般的に意識不明で溺れた場合は、水を大量に飲んで肺の空気が押し出される。その結果、浮き袋の役目を果たす肺の空気がなくなるため、遺体は沈む。しかし、Bは浮いた状態で見つかり、肺の中の海水も少量。すなわち、意識を失って溺れたわけではないことが推測された。

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「それに…この傷」

「致命傷になった打撲創ですか?」

「いえ、こちらの擦り傷です」

上野が注目したのは、警察が致命傷としていた打撲創ではなく、その周りにあった擦り傷。もしその場で転倒して岩に頭を打ち、一気に意識を失ったとすれば、頭部には1箇所の傷しかないはずだ。そして上野は、腕や足にあった擦り傷に関しても指摘した。

「それは溺れた後、海面を浮遊中、波に揺られて浅瀬の水底にある岩や砂利に体が当たってできたものではないでしょうか?」

「いえ、その傷にはすべて生活反応が残っています」

生活反応とは、皮下出血や化膿など生きている組織にのみ発生する変化であり、死んだ後にはできない。おでこや腕、足にあった擦り傷は、その生活反応が残った傷であり、すなわちBが生きている時についたもの。上野が死体から導き出した事件の真相は…

Bは釣りをしている最中、突然何者かに襲われ海面に何度も顔を押し付けられた。海面から顔を出そうともがいたBの顔、手、足に、浅瀬の砂利や岩が当たり擦り傷ができた。やがてBは水を飲んでしまい窒息死して息絶えたのだ。

この上野の再鑑定の後、警察は事故死ではなく殺人として捜査を再開。やはり、Aと第三者が共謀した保険金狙いの殺人だったのだ。

階段の死体

ある日の明け方、長い階段の下で倒れている女性が発見された。女性はくも膜下出血を起こしており、それが原因で階段から転び落ちた病死として処理されようとしていた。

「彼女がくも膜下出血を起こすなんて考えられません。運動をしていて健康的な生活をしていましたし、現場は彼女の行ったこともないような場所でした」

夫は妻の病死を信じられず、警察に訴えたが門前払い。藁をも掴む思いで上野の下へやってきたのだ。

「上野先生!僕は真実が知りたいんです!」

「わかりました。それではその現場に連れて行っていただけますでしょうか?」

事故現場…

「ここですか」

「この階段から転げ落ちたらしいんです」

「ご主人、奥様は階段から転げ落ちたんではありませんね」

「えっ(;゚Д゚)!」

事件現場は長い階段の下。階段から転げ落ちると全身に擦り傷ができるのだが…。女性は手と足に少しの擦り傷があるだけだった。

「しかも、奥様の頭には階段から転げ落ちた時にできるような陥没損傷がない。これは…ひき逃げです」

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一体なぜ、ひき逃げなのか?上野が見逃さなかった死体の声。それがこのアザ。真ん中だけ白く、周りが赤いこの奇妙なアザは、圧迫痕と呼ばれるもので1点に強い衝撃を受けた時にできる。このアザが最も出来やすい事件がひき逃げ。はねられた際に体の1点に車の衝撃が加わることで圧迫痕がその衝突部分に残ってしまうのだ。

上野が死体から導き出した事件の真相は…。何者かが運転中に被害者である女性を轢いてしまった。男は女性が階段から落ちたと見せかけるために、近くの階段の下に女性を置き去りにしたのだ。

上野の再鑑定を受けた警察は、圧迫痕から車を割り出し犯人を逮捕。飲酒運転によるひき逃げ事件だった。

美しい死に方

人気のない場所に止めた車の中で、20代の女性が死んでいるのを通行人が発見した。女性は助手席に座って死んでおり、後部座席には練炭が燃やされた2つの七輪。車のドアにはカギがかけられ、エンジンキーは車内で差し込まれたまま。争った外傷や形跡はなく、死因は一酸化炭素中毒。県警は自殺として処理をしていたのだが…。

刑事「状況証拠から見て、自殺しかありえません。ただ、この女性には1億円の生命保険がかけられていたんです」

「それは怪しいですね」

上野は死因を再度調べたが、女性の体に出ていた死斑はあざやかな紅色であり、これは一酸化炭素中毒特有のもの。死因に間違いはなかった。

「資料を見ると女性はノーメイクで亡くなっていたんですか?」

「そうですね」

「女性は失禁していましたか?」

「自殺の際は大量に失禁するのが普通ですよね」

「いや、それは妙ですね」

上野の経験から、覚悟の自殺をする女性は、最後まで美しくありたいという気持ちで、自殺前に必ずメイク、排尿をして臨む。ノーメイクと失禁は、自殺を覚悟した女性としてはあり得なかった。

「そういうもんですか…」

「それに練炭が後部座席側に二つあるというのもおかしい。車中なら1つで十分死ねます。そして車の中で自殺する時は、自分が運転席側にいて練炭は助手席に置くのが普通です。車の中に炭のついた手袋はありましたか?」

「いやー、手袋はありませんでした」

「刑事さん、この事件は他殺の可能性が高いです」

練炭で自殺するには、七輪や練炭に必ず触れなければならず、細かい炭が手の指に必ずついてしまう。しかし、女性の手には炭がまったく付着しておらず、現場に手袋もなかった。

「ノーメイク、失禁、練炭、そして手。全てが他殺であることを物語っています」

車内で死亡した女性、保険金殺人容疑で捜査。この記事が新聞に掲載されたのは、上野が再鑑定した1ヶ月後のことだった。

死体がないっ!?驚愕ミステリー

これは上野ですら、全く経験のない事件だった。

弁護士「遺体がなくても大丈夫ですか?」

「再鑑定は死体の写真や資料がないとできませんよ。どんな事件なんですか?」

「実は…火事なんですが」

火事が起きたのは地方で、八百屋を営むある家。その家の主人が寝ていたところ、突然大きな音がしたと思ったら室内には激しい炎と煙。無我夢中で命からがら逃げ出したというのだが…

「実はその男性が、多額の損害保険と火災保険をかけているんです。しかも今まで二度も同じような火災になって、保険金が支払われているんですよ。火傷を負った男の写真があるのですが、この写真で単なる事故なのか、男が故意に放火したのか鑑定してほしいんです」

「生きている人の再鑑定をするということですか?」

「はい、お願いします」

これまで2万体の死体を見てきた上野。しかし、生きている人間の鑑定は初めてだった。

「わかりました。できる限りやってみます。資料をお預かりしてよろしいでしょうか?少し調べますので1週間後にまたお越し下さい。それから、男の鼻毛について調べてきてください」

「鼻毛ですか?」

1週間後

「先生、どうでしたか?」

「これはただの火事ではなく、主人が自ら火をつけた放火です」

「本当ですか!?」

「調べてみたらおかしなことしかないんですよ」

「例えば…?」

「まず…大きな爆発音です」

火事の後の調査で、主人はこのように供述していた。

「寝ていたら突然バーンという大きな音が聞こえたんです。目が覚めたらもうすでに火と煙がスゴくて無我夢中で逃げました」

「たしかに男はそう言っていました」

「この音から火事の原因は、2つに限られるんです」

1つ目は一酸化炭素の引火爆発。ボヤのような不完全燃焼が続き、室内に充満した一酸化炭素に火が引火して爆発。しかし、その場合だと爆発前に一酸化炭素中毒で意識に重い傷害が残る。

もう1つは、灯油などの可燃性の液体に引火し爆発して起きる火事なのだが…。

「そのような火事の場合は、一瞬にして全身を炎に包まれる可能性が非常に高い。しかし、この男の写真を見ますと、男は手や足には火傷を負っていますが、背中には火傷を負っていない。炎が燃え盛る火事では、背中に火傷することが普通なんですよ。あと…例の件はどうなりました?鼻毛です」

「あぁ、鼻毛に関しては特に異常はなかったようです」

「やっぱりおかしいですね」

男は激しく燃え盛る火の中をかろうじて脱出したという。しかし、鼻の粘膜には、逃げる途中で火の粉が入り込み鼻毛が燃えてしまうのが普通。そして、鼻だけでなくノドの中も火傷し、発声異常も見られるのだが。男は意識、声ともにはっきりしていたという。

「そういうことか」

「そして最後の決め手ですが…弁護士さん、あなたは火が体に移りそうになった時にどうやってはたきますか?」

「そうですねぇ…こうですかね」

「そういうことです」

「ん?」

男は降ってくる火の粉を払いながら服を着ようとしたが、服に火がつき、体にも火が燃え移ったため、慌ててはたいて逃げたという。しかし、それならば手のひらにかなりの火傷を負うのだが、男は手の甲にしか火傷がなかったのだ。

「たしかに、無我夢中の時に手の甲で火を払うのは、明らかに不自然です」

「男の体は語っています。これはただの火事ではなく放火だと」

この上野の再鑑定により、火事は保険金目当ての放火だと認定された。