2016年4月に発生した熊本地震。その直後にツイッターにこんな投稿が!
“おいふざけんな、地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが”
ただでさえ大変な被災地でライオンが道路を闊歩している。このツイートは20000人以上にリツイートされ、瞬く間に拡散。動物園にも100件以上の問い合わせが入った。しかし、このツイートは全くのデマ。海外の写真を転載しただけのものだった。地震の混乱に乗じて多くの人が信じてしまったという。
トランプ大統領も叫んだフェイクニュース。今、嘘が嘘では済まされない時代になっている。実際にフェイクニュースはどうのように作られて、どのように世界を動かすのか?最新のフェイクニュース事情を3つのケースに分けて紹介します。
CASE1 アメリカ大統領選挙の裏に…世界のフェイクニュース工場
2016年アメリカ大統領選挙。そこで話題になったのがフェイクニュース。その中の1つ、ロシアゲート疑惑。トランプ大統領とロシアが裏で繋がっていて、大統領選挙の際ロシアがトランプ陣営に有利な働きかけをしたのでは?という疑惑。トランプ大統領は100%ない、フェイクニュースだ。と否定したが、これ以外にも様々なフェイクニュースが氾濫していた。
そしてそのほとんどが、アメリカと全く関係ないある国で生み出されていた。その国とは、マケドニア共和国。1991年、旧ユーゴスラビアから独立した東ヨーロッパに位置する国。その中部にヴェレスという小さな町がある。人口4万人、かつては工業の町として栄えたが、工場の閉鎖と共に荒廃が進み失業者で溢れかえっていた。
失業中の若者は、自身でニュースサイトを立ち上げ広告のアクセス数で報酬を得ていた。情報は自身で得ずに、既存のメディアのサイトをコピーして自分のサイトへ転載していた。この時はまだ、スポーツや芸能などを中心に普通のニュースをコピーしてサイトに載せるだけだった。
しかし、ある日遠く離れたアメリカでは大統領選挙の真っ最中。その中にヒラリー氏の健康に関する報道があった。この時、若者はあることを思いつく。「ヒラリー氏重病発覚!大統領選から脱落!」若者は、嘘のニュースをでっち上げ元記事を改変して掲載したのだ。しかし、これがそれまでのアクセスの数倍ものアクセスを記録。政治ネタはアクセスが伸びると気がついた若者は、もっと稼ぎたいとより過激でインパクトのあるフェイクニュースを次々と掲載。この根も葉もないフェイクニュースを乗せた若者のサイトの広告収入は月に€9000、日本円にして約120万円以上になっていた。実にマケドニアの平均月収の30倍!
フェイクニュースは儲かる。小さな町ですぐに噂は広まった。失業者のみならず生業に就くものまで仕事を辞め自宅でニュースサイトを作るようになり、この町から140以上のフェイクニュースサイトが発信されるようになった。そして、そのほとんどが自分たちには何の関係もないアメリカ大統領選挙のもの。中でもヒラリー氏を批判する記事、トランプ氏を擁護する記事はアクセス数を稼いだ。
第45代のアメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ。その勝利はヨーロッパの小国から発信された多くのフェイクニュースのおかげだったのかもしれない。
CASE2 陰謀論がリアルな脅威に!ピザゲート事件
2016年12月アメリカ・ワシントンのピザ店コメットピンポンに銃で武装した男が侵入し発砲、そしてこう叫んだ。「陰謀の真相を確かめるために来た」
事の発端は1ヶ月前。店のオーナー・ジェームズ氏は、何気なく自身のInstagramを見ていた。ある日、ジェームズ氏をフォローする人の数が突然増えた。そしてそのコメント蘭には、お前を追い詰めてやる、くたばれ児童性愛者など誹謗中傷、脅迫めいた言葉が次々と書き込まれていた。
児童の性的虐待と人身売買の地下ネットワークが存在し、その中心人物はヒラリー・クリントンで拠点はピザ店のコメットピンポンだ。というフェイクニュースがサイトに上がっていたのだ。ジェームズ氏は、ヒラリー氏の民主党を支持しており、その選挙対策委員長とは友人だったがヒラリー氏とは面識はなかった。なぜ、このようなフェイクニュースが広まったのか?
大統領選挙の最中、ヒラリー氏の選挙対策委員長のジョン氏のメールが流出。その中に仲のよかったピザ店のジェームズ氏とのやり取りがあった。
「今度、コメットピンポンでチーズピザでも食べながらパーティーしよう」
それは他愛もないごく普通の内容だった。しかし、チーズピザは幼女を現す隠語だ、コメットピンポンの頭文字CPはチャイルドポルノを意味している!ごく普通のメールの中身が、悪意ある者たちの手によって次々に児童への性的虐待の陰謀論に変えられ、トランプ支持者を中心に拡散!いつしかピザゲートと呼ばれるようになった。
さらにトランプ氏の側近で、後の大統領補佐官マイケル・フリン氏の“ピザゲートは存在する”というツイートで、ただのデマや噂話がとたんに信憑性を帯びた。そして、このフェイクニュースを信じた若者がピザ店を襲撃。男は逮捕され、幸いけが人はいなかった。逮捕された男は、子供達を救出するためだったと語った。
CASE3 フランス大統領選挙 フェイクニュース攻防戦
2017年5月フランス大統領に就任したエマニエル・マクロン氏。アメリカ同様フランスでも選挙中に様々なフェイクニュースが飛び交っていた。こうした中、フランス中のメディアが一堂に会し、ある動きが起きようとしていた。
アメリカの大統領選挙のようにフェイクニュースが氾濫し選挙に影響を出してはいけないと、新聞社やテレビ局など30以上の団体が組織の壁を越え連携。フェイクニュースに対抗するプロジェクトを立ち上げた。それがクロスチェック。
フェイクニュースの可能性がある記事について、共同で事実確認を行い、検証結果をサイトで公表しフェイクニュースを排除するというもの。チェックする側とフェイクニュースの攻防戦は選挙当日まで続いた。様々なフェイクニュースの逆風を乗り切り、大統領に就任を果たしたマクロン氏。
果たして、あなたが見ているニュースは嘘か真実か…