結婚詐欺に保険金詐欺、男を手玉に取る現代の悪女に負けず劣らず、世間を騒がせた江戸時代の悪女の話。現代の文春砲にも負けない江戸時代のゴシップ誌「文化秘筆」には、そんな狡猾な女によるある事件が記録されている。
その事件は、江戸の町を騒然とさせ結末には驚きの大どんでん返しが待ち受けていた。
江戸時代のゴシップ誌「文化秘筆」
事件のあらまし
1816年事件は、現在の品川で起こった。被害にあったのは、母一人、娘一人で暮らす家庭に婿養子に入った男。男の名前は正吉(仮名)。婿養子であったが妻・お春(仮名)も正吉によく仕え不自由することなく暮らしていた。
しかし、正吉にはひとつだけ大きな不満があった。それは、妻・お春が必ず別の部屋で寝ること。しかも、一晩だけではなく何日も続いたのだ。さすがにたまりかねた正吉がお春を問い詰めると、お春は背筋も凍る恐ろしい言葉を言い放った。
「母が元気なうちは、一緒に寝ることを禁じられています。その詳しい理由は、母を殺してくれたらお話します。」
妻・お春が言いだしたのは、実の母の殺人依頼。愛する妻との生活に母親が障害になっていると追い込まれた正吉は、母殺害を受け入れてしまう。
そして決行の日。正吉は、お春を芝居に行かせて母親と二人になり、ついに実行にうつしてしまう。そしてその夜…。愛する妻と寝るために義理の母を殺めた正吉。これでお春も喜んでくれると思いきや…なんとお春が、役人を呼び正吉がお縄に。
文春砲顔負けのゴシップ誌「文化秘筆」が伝えた衝撃の結末とは!?
お春に隠された裏の顔。実はお春には正吉のほかに愛人がいたと思われ、邪魔な亭主と母親を殺害して、愛人と一緒になろうという計画だったのだ。お春はゲスな不倫妻。まんまと利用された正吉。しかし、驚きの展開が待っていた。
血まみれの着物の下にあったのは、母ではなく犬の死体。実は、お春の言葉を信じきれなかった正吉は、義理の母をお春にバレないように外に泊まらせて、犬の死体を持ってきて母に見立てていたのだ。
失敗に終わったお春の企みは文化秘筆によって広く伝えられ、当時の人々の大きな関心を集めたのだった。