いつの世も、玉の輿は噂話のタネ。 今回の主人公は世界的な大富豪に見初めらた、まさに「日本のシンデレラ」とも言うべき女性です。その女性の名は「加藤ユキ」。 明治から昭和という激動の時代を駆け抜けた美女。
どこにでもいた「ただの芸奴」の相手が、大富豪ジョージ・モルガン。 彼は、アメリカの大財閥で「金融王」と呼ばれたジョン・P・モルガンの甥っ子だった。J・P・モルガンと言えば、世界トップレベルの金融大財閥。 現在の総資産はなんと、288兆円だ。
2人の出会い
世紀の玉の輿の舞台は京都。 アメリカの大富豪ジョージ・モルガンは、芸奴をしていた「お雪」と出会う。
「失礼いたします。お雪と申します」
「…ビューティフル!お雪さん、私と結婚してください!」
お雪の美しい踊りや細やかな気配りに惹かれたジョージは、まさかの即日プロポーズ!
「また、ご冗談を……」
もちろん真に受けるはずもないお雪。 しかし、彼は本気だった。 なんとジョージはその後、4年に渡って何度も来日。その度にお雪を猛烈に口説き続けたと言う。その熱意に押され、京都の芸奴と世界的大富豪という史上空前の玉の輿婚がついに成立! そのニュースは世界を駆け巡った。
この史上最高レベルの玉の輿婚。実は、結婚に至った経緯がスキャンダル! ジョージからプロポーズを何度も受けていたお雪でしたが、実は…
「あなたとは結婚できません」
「…(´・ω・`)」
「私には他に結婚したい男性がいるんです」
お雪には、心に決めた男性がいたのだ。 そのお相手とは京都大学の前身、京都帝大に通う10歳年上の学生・川上俊介。お雪は川上を献身的に支え結婚を見据えていたのだが、この後ある出来事をきっかけに恋人を裏切ってジョージと結婚してしまう。その出来事とは、いったいどんな事だったのだろうか?
結婚を決めた経緯
大富豪ジョージ・モルガンからの熱烈なプロポーズに悩んだお雪は、断る方法を友人に相談する。
「ジョージさんに結婚を迫られているんですけど、どうしたらいいでしょうか?」
「それなら良い案がある」
その友人とは牧野省三、俳優・津川雅彦の祖父で「日本映画の父」と呼ばれた人物だった。そんな彼の良い案とは?
「ジョージに諦めてもらうために、身請け金をふっかけてみたらどうかな?」
身請け金とは、芸奴の身を引き取る際に支払うお金。
「例えば3万、いや4万円!」
なんと牧野と相談して決めた金額は、今で言う8億円相当。とんでもない大金をふっかけて結婚をあきらめさせようとしたのだ。
そしてジョージにそのことを伝えるお雪。
「4万円?」
「4万円いただければ、あなたと結婚いたします」
これで諦めると思いきや…
「もちろん、お支払いします」
「えっ(;゚Д゚)!」
さすが世界的大富豪のジョージ、8億円もの大金をあっさり支払ってしまった。 これで後には引けなくなったお雪は、ジョージと結婚したのだ。 世界的大富豪にとっては、8億円など「はした金」だったのかも知れない。 しかし、幸せな結婚生活は長くは続かなかった。
玉の輿婚の現実
誰もが羨む玉の輿婚だったが、現実は甘くはなかった。
「金に目がくらんだのかよ」
「さぞ、いい生活してんだろうなぁ」
大富豪との結婚は、嫉妬や好奇の目で見られ心ない言葉をかけられる事も。そうして 日本にいられなくなった2人は、フランスへ移住。 世界的大富豪の妻として、パリの社交界に華々しくデビューしたお雪。 しかし、ここでも次々と悲劇が襲う。
1915年、最愛の夫が心臓麻痺で他界。 結婚からわずか11年目のことだった。 独り異国の地で歳を重ねていったお雪。 そんな彼女を待ち受けていたのは、日本がアメリカと対立した第二次世界大戦だった。 アメリカによる本土攻撃が始まると、お雪の故郷・京都も爆撃されるのではとの噂が広まった。
そして伝説へ…
一説によると日本に帰国したお雪は、「京都を爆撃しないで欲しい」という一通の手紙をアメリカのモルガン一族に送ったと言う。 実は手紙を送ったモルガン一族は、その莫大な資産から「アメリカの陰の支配者」と呼ばれ、大統領をしのぐ発言力を持つとまで言われており、そんな一族に望みを託したのだ。
「ジョージの愛した美しい京都の街が灰になってしまうなんて耐えられない」
お雪の京都のために身を投げうつ覚悟が、本当に通じたのかどうかはわからない。しかし、戦後の祇園では、お雪のお陰で京都は助かったと語り継がれてきたのです。