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『風の谷のナウシカ』は西暦3800年の話だった!?セラミック文明の果てに…

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岡田斗司夫さんがナウシカの解説をされていたのでご紹介します。何回も見ているナウシカですが、そんな背景があったなんて何も知らずヘラヘラ見流していたかと思うと、もっと楽しめる作品なんだなとも。でもやっぱり詳しく説明してもらわないと一見して全てを理解するなんて不可能すぎる(笑)。

 

 

冒頭18分でわかる風の谷の歴史

アバンタイトル(プロローグシーン)

【画像】© 1984 Studio Ghibli・H

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砂塵の中を歩くユパのカットから物語は始まります。

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次のカットでは雪のように見える星の形をした白い胞子が細かく書き込まれている。ここまで胞子が書き込まれているのはアバンタイトルだけで作中では雪のように描かれていることが多い。

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胞子に犯されている世界を圧倒的な作画で描いていて、これが日常の世界なんだとわかる。ユパは無言でこの村の中を探索して、扉に大きな飾りがある身分が高そうな人の家に入っていく。

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ユパが部屋の中を見回すと菌類に覆われた部屋の奥にミイラ化した人の死体を見つける。死体は冠をかぶっており王族であることがわかる。村で一番立派な建物の中で冠をかぶった死体を見つけたことで、この村の王が死んでしまったということがわかる。その死体の傍には、一回り小さい冠をかぶった死体もならんでおり、奥さんか子供だと考えられる。

2体の死体は抱き合ってミイラ化しており、蟲の侵入に怯えながら胞子の毒、瘴気で窒息死したとわかる。村を作り、村の奥の立派な家に住む王族が、その家の一番奥の隅で死んでいた。この状況に生き残りがいないと確信したユパは「また、村が1つ死んだ」とつぶやく。

このことから、この世界では村が次々にカビに覆われて滅びていっているとわかる。ユパが拾い上げようとした、まだそんなに古くない人形が、あっという間に崩れ落ちる様子からこの世界は腐敗が早いとわかる。

この人形の存在から先ほどの小さいミイラは女の子であり、王女であることが推察できる。人形で遊ぶ小さな女の子、そんなどこにでもある日常があっという間にカビに侵食される。そしてそれは、日常的に起きているということがわかる。ここまでシーンは、胞子が吹き出すシーンとユパが扉を蹴り倒すシーン以外はBGMや効果音もなく静寂で描かれている。

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次のシーンでは、その静寂が突然気味の悪い鳴き声で破られる。大王ヤンマと呼ばれる蟲たちの鳴き声で、風車の周りを大王ヤンマが群れを成して飛び交っているというシーンが流れる。

「行こう。ここもじき腐海に沈む」

とユパが絶望した顔で語る。

タイトル前で描かれる腐海、蟲というのは絶対悪であって人間を脅かす存在として描かれている。風の谷のナウシカの根本的な構造として、冒頭で小さな幸せな世界を壊してしまう蟲、カビの世界が、終盤では絶対悪に見えなくなってしまう。美しいとさえ見えてしまい、見ている側の気持ちが全く変化してしまうというのがある。

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次のシーンでは、世界観がシンプルに語られる。錆とセラミック片に覆われた荒れた大地。ということでこの世界には砂や土は、もうほとんどないということを説明している。砂漠のように見えている大地は、錆びたモノとセラミック片で絶望的な世界を生きているという物語だと説明している。

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コミック版では、ビルよりも遥かに大きい巨人が街を破壊する様子が描かれ、より細かい世界観が説明されている。イギリスの産業革命から1000年後、2800年頃に全盛を迎えた世界は、「火の7日間」という崩壊を迎えたということになり、その崩壊後1000年、西暦3800年ぐらいがナウシカの現在ということになる。

蟲よけの棟

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王蟲に襲われたユパはかつての教え子であるナウシカに救われる。ナウシカと砂丘の上で合流するユパ。その砂丘には奇妙な塔が建っている。それは「蟲よけの塔」、石で造られた塔には風車がたくさん回っており音をたてている。

絵コンテによると、風で風車が回転すると蟲にとって嫌な音が発生すると書かれている。風の谷に腐海から飛んでくる蟲を防ぐためにこの塔があるという設定になっている。

風の谷が存在している理由は、海から吹き上げてくる風の力で胞子や瘴気を防いでいるからなので、この風車には風の向きや強さを測るという役割もあると推測できる。

塔は石でできている。砂のように見えるものはセラミック片でもう鉄など存在していない世界。全ての素材は大昔にセラミックに置き換えられている。スーパーセラミックという宮崎監督が設定したもので、どんな硬さでも、薄さでも対応できるオールマイティなもので、誰もこの素材に変わるものを探そうとはしなかった。着ているものから建物まで全てがセラミックで出来ているセラミック文明なんだという。

これは現在の石油文明の置き換えになっている。全てをセラミックに置き換えた結果、この世界にはセラミック以外の資源がなくなってしまった。セラミックを再生利用する技術が失われたために、再生不可能なセラミックしかない世界になってしまったのだ。

そうした時代には、蟲よけの塔は存在しているはずがないので、風の谷の人々はセラミックの小さな石を積み上げてなんとか建てたのだろうと想像できる。一度石器時代へと戻ってしまっているのだ。

これはローマ帝国がヨーロッパを科学文明で支配し、その崩壊後ヨーロッパ全体が一度石器時代まで退化してしまったという歴史的事実がモデルになっている。ローマ水道や大理石の建物で有名なローマ文明、その維持には膨大な材木が必要だった。そのためローマ帝国は、ヨーロッパ中の森林を500年あまりで切り尽くしてしまう。

その後、異民族の侵入で滅ぶのだが、滅んでしまった後に誰も施設の保全ができなくなってしまった。どうやって造ったのかもわからない上に、その基礎となる森林もなくなっていたために、木で建物を作っていた時代にすら戻れずローマ帝国崩壊後、ヨーロッパは1000年近く石器時代に近い段階まで戻されている。森が復活してルネサンスが始まるまで暗黒の中世と呼ばれていたのはそのことを指している。

風の谷もこれと同じでセラミック文明がないと生きていけなくなっている。文明崩壊から1000年経って風の谷の人々は、ようやく石器時代よりも少しマシな時代に以降していることを描いている。それが蟲よけの塔が石造りなことでわかるという。

ヒロイン登場

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ナウシカが乗るメーヴェは大昔の遺産で、今や修理できないどころか、構造自体理解もできない動力で動いている貴重なもの。ユパのところへ降りてくるナウシカの飛行の様子でこの映画の中の飛ぶという感覚を視聴者に伝えている。

着陸したナウシカは、慣性で体を左持って行かれながら画面に向かってダッシュしてくる。一連の流れは作画の鬼とも言えるほどよく描かれている。

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ナウシカが着地した瞬間にさりげなくラストの伏線が描かれている。後ろに見えるのが酸の海で、その手前には最後の決戦の時に風の谷の人々が逃げ込んだ宇宙船の残骸になっている。つまりこのファーストシーンでラストシーンをちゃんと見せているのだ。

再会した2人の会話

「ナウシカ 見間違えたぞ」

「1年半ぶりですもの」

「みなに変わりはないかな?」

暗い顔をするナウシカ

「どうした」

「父が… 父はもう飛べません」

「ジルが? 森の毒がもうそんなに…」

「はい 腐海のほとりに生きる者の定めとか」

「もっと早くに訪れるべきであった」

つまりナウシカの父親、風の谷の族長であるジルは映画の最初から寝たきりなのだが、ユパが1年半前に風の谷にいた時は元気だったはずだ。それがたった1年半で寝たきりになって動けないほど早く病気が進行したことを表している。

ナウシカの「腐海のほとりに生きる者の定め」というのがこの映画のテーマになっている。風の谷というのは理想郷のように描かれているが、画面に見えない部分ではジルのようにたった1年半で動けなくなるというような過酷な生活を送っていることが徐々にわかってくる。

宮崎監督は砂漠の民を描きたかったらしく、過酷な環境でなぜ人間は生きていくのだろう?なぜ砂漠の民は水が豊富な所で暮らさないのだろう?定住せずに移住を繰り返すのだったらもっと環境が良い場所で暮らせばいいのに。なぜわざわざ生きにくい場所を選んで暮らすのか?

サン=テグジュペリの「人間の土地」という小説を読んだ若かりし宮崎監督は、砂漠地帯という極限状態での僚友との友情や、人間らしい生き方とは何か、という主題に大ショックを受けて砂漠の民の生活に取り憑かれたという。

宮崎監督のアニメの全てに出てくる大テーマ「支えるに足りる共同体」。苦労してでもそこで生きていきたい共同体というのが、ナウシカからはっきり出始めているという。風の谷は、なぜ支えるに足りるのか?父親の命を削る毒の中でなぜナウシカたちは暮すのか?そういうことが大テーマになっている。

砂避け棚

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ユパが風の谷に向かい谷をどんどん下っていく道中に何度も現れる砂避け棚。絵コンテの解説には砂を避けるための棚と書かれている。。腐海から降りてくる砂と海から吹き上げられてくる砂を回転する羽で叩き落とし下に貯めている。これが風の谷が長年かけて造ったシステムになっている。

蟲避け塔と同じく塔の材質は石になっていて、羽の部分は木と布でできている。宮崎監督の初期案では、この下に村はあるが村人は全員、村の中に暮らさずに城の中に住んでいるという設定だった。このシステムが完成するまでは、機密性の高い城の中に村人は逃げ込んでいた。そのために風の谷の城はあんなに大きくなっているという。だがこの砂避け棚が完成したため、その設定は使われなくなった。

ではこの砂避け棚の完成には一体どれくらいの年月が必要だったのか?このシステムがない頃の風の谷の環境を考えると恐ろしくなってくる。少し風の向きが変わっただけで村が全滅してしまうような環境だったからだ。

そのため村人たちは常に城の近くで働き、微妙な風の変化を感じ取って異変があれば全てを投げ出して城に避難するという生活を送っていたことだろう。そのため、蟲避け塔などに風を感知する装置をつけたりしたと考えられる。何世代にも渡りそんな生活を送る中で砂避け棚を完成させた。

ナウシカに出てくる村人たちは善良で働き者ばかり出てきてつまんないと感じますが、なぜみんなが働き者なのかというと、風の谷では怠け者というのが存在できないほど貧しくて過酷な生活を送っている。

砂避け棚を造った人々は、放射能まみれの環境下で働いてたのと同じくらい命を削って働いていたはず。そんな覚悟を持って働くことを何世代も続けなければ、こんな巨大な構造物を何重にも造れない。そんな祖先たちの犠牲の上に砂避け棚というのは出来ている。そんな彼らに尊敬の念を込めて塔を見上げるユパのシーンは、胸を締め付けるほどの感動を与えてくれる。

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砂避け棚を抜けて風の谷に到着したユパ。水を組み上げる風車の後ろには何重にも連なった砂避け棚が見える。壁も風車も全て石積みだが、これもレンガや石でなくセラミックの瓦礫である。壁から水が流れていることから壁ではなく水道だということがわかる。水道の穴に高さの差があるのは、水の貯水量がひと目でわかるようにだとわかる。こういうことがひと目でわかるシーンになっている。

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貯水池を抜けるとやっと風の谷が現れる。崖の細い道を通り、砂避けの棚を通り抜け、風車を抜け、貯水池を通り抜け、果樹園を通り過ぎるとやっと風の谷の全景がわかる。いくつもの風車の遥か先の方にナウシカの住んでいる城が見えます。

遥か下の方に見えるのが族長の城なんですが、普通王族というのは高い位置に住みたがるのだが、風の谷は逆で谷の上に行くほど腐海からの胞子が危険なので族長が一番下に住んでいるという構造になっている。

見える風車は全て用水風車で、城の地下500Mにある水源から水を引き上げている。この風の谷の風景に自然にできたものは何1つなく、全てナウシカの祖先たちが子孫たちのために作り上げた土地になっている。

例えば果樹園の土。この土もゼロから造ったもので、セラミックの瓦礫の中から本物の砂や土を1粒ずつ探し出してかき集めたもの。それを落ち葉や自分たちの排泄物など有機物と混ぜて本物の土を何年もかけて作った。

これは開拓時代のアメリカでも行われたことで、作物が育たない土地で土を一から作らなけらばならなかった。中西部では風が強いために表面の土が全て飛ばされて、また一から土を作らなければならない。日本の農民のように土地が豊かとか痩せている土地があるというのではなく、一から作らなければならなかったのだ。そのため土地に対する執着は強く、隣人とライフルで撃ち合いをするなどということが起きる。それは全て自分たちで作り上げた土地だからなのだ。

優雅に見える風の谷も何十世代もの人たちが命懸けで作り上げた宝石のような土地なのだ。

と無料放送はここまででした。次の放送でもナウシカの話を少しするそうなので見たら書き足します。