金と女を巡るトラブルが後を絶たない現代ですが、今回、紹介する偉人もお金にまつわるスキャンダルを持っていた。その偉人の名は野口英世。細菌学者として黄熱病や梅毒の研究に命をかけ、3度もノーベル賞候補に挙がった偉人中の偉人。実は、とても金遣いの荒い男だったのだ。
お金と女性のスキャンダル
芸者遊びで借金生活
19歳で福島から上京する際、母親から生活費として現在の15万円に相当するお金をもらったのだが…。宵越しの金を持たない主義の野口は、芸者と共に宴会。 直ぐに生活費を使い果たし、以降借金を繰り返すようになる。
その反面、仕事は順調だった。20歳で医術開業試験に合格し、21歳で国内屈指の伝染病研究所に勤めるなど、活躍の場を広げつつあった。
お金目当ての婚約
明治33年、友人と共に箱根の温泉に行った時、再びスキャンダルが!
野口は、東京の資産家・内藤夫婦と出会う。 内藤夫婦から仕事の内容に関心された野口は、「姪のます子と結婚してほしい」と言われる。ここで野口は閃いた。 資産家の持つ金に目をつけた野口は、なんと会った事のない女性とその場で婚約。 持参金として、アメリカへの渡航費用の援助を取り付けたのだった。
その金額は、今の価値にして約100万円。 このお金でアメリカに渡り、立派な研究を行った…。 伝記本の常連である野口英世なら当然そうするかと思いきや、そんな男ではなかった。
大金を手に入れた野口は、直ぐに料亭で豪遊。 なんと一晩でそのほとんどを使い切り、手元には10万円相当しか残らなかったと言う。 結局、友人の血脇守之助が渡航費を立て替え渡米。 もともと結婚する気はなかったので、お金をもらったら内藤夫婦の前から姿を消して婚約を破棄。 夫婦へ返す事となった婚約持参金100万円も、友人の血脇に立て替えさせたのだった。
改名にまつわる話がやばい
お札にも刻まれている野口英世という名前だが、もともとの名は野口清作。 21歳の時、奇妙な事件に巻き込まれて英世と改名したのだ。 それは、1冊の本との出会いがきっかけだった。その本が、坪内逍遥の小説『当世書生気質』だった。
その本を読んで野口はビックリ!
「これはまるで、俺のことが書かれてるみたいじゃないか!」
その内容は、田舎から出てきた秀才の医学生が、女と酒にはまり自堕落な生活を送るというもの。 しかも、その男の名前が野々口精作。 なんと野口と二文字違い。
さらに、小説の精作は、最期に自暴自棄になって自殺するという悲惨な内容。 まるで自分の末路を書かれているようで気味が悪くなった野口。
「こうなったら、名前を変えるしかない!」
野口は、この小説の人物と無関係であることを示すために改名を決意したのだ。 しかし、改名などそう簡単に認められるものではない。 そこで野口は、スキャンダラスな行動に出る!野口英世の改名それは超強引なものだった。
当時、改名が許される条件の一つが、村に同じ名前の者がいる事。 そこで野口は、たまたま同じ村に生まれた【清作】という赤ん坊を探し出し、強引に野口家の養子にしたのだ。 こうして同じ村に、二人の野口清作が誕生。
「野口清作が二人いては、ややこしかろう!」
と役所に訴え、晴れて野口英世となったのだ。
ここで気になるのは、野々口精作のモデルは誰だったのかということ。 実はこの本、明治18年に出版されたもの。 野口は明治9年生まれなので、この小説が出版された当時は野口が8~9歳の無名時代。 つまり、野々口精作は偶然名前が似てしまっただけだったのだ。 作品を書いた坪内逍遥も、「彼とは全く関係ない」と語っている。