プラトンが残したアトランティス大陸についての記述は、多くの冒険者や学者たちの想像をかき立てた。本当にアトランティス大陸は太古に実在したのだろうか?それとも単なる伝説なのか?そしてプラトンが伝える通り、アトランティス大陸は消滅してしまったのだろうか?そこには発達した文明が存在していたのか?
アトランティス大陸
プラトンの著書
アトランティスの伝説は2000年以上前から学者や探検家を魅了してきた。ギリシャの哲学者プラトンが紀元前360年ごろ、ティマイオスとクリティアスという著書にこう記している。
アトランティスの首都は優れた建築術と工学技術を駆使して作られ、人民は高度な軍事力を有していた。ところがある日突然、悲惨な1日を迎え島全体が消滅してしまった。
さらにアトランティスは、ポセイドンが築いた都市だと記されている。ポセイドンは、ギリシャ神話の海の神だ。現代人にとってギリシャの神は神話上の存在だが、古代ギリシャ人は神々が実際にいると考えていた。
地上に降りたポセイドンは、人間の女と結婚し双子の息子を5組もうけ、その息子たちをアトランティスの王にした。こうしてアトランティスには、10の王国が出来上がった。中心となったのは、最初に生まれた息子アトラスが支配する国だった。
都市は山を囲むように作られ、山の上にはポセイドンを祀る神殿があった。中央の山を水路で取り囲み、さらにその外側に土手と水路を交互に配して三重にした。それは堀を巡らした中世の城に似ている。三重の水路をつなぐ運河も作られ、巨大なガレー船も通れるほど広かったという。
最大の疑問は、アトランティスが実在したのならば一体どこにあって何が起きたのかということだ。アトランティスはヘラクレスの柱の前方にあったと記されている。ギリシャ神話のヘラクレスの柱は、未知なる場所への門を表している。だが、現在ではジブラルタル海峡の両側にある2つの岩山を指すと考えられている。つまり、その岩山の前方とは大西洋になる。
アトランティスのあった場所
これまで、数多くの場所が失われた都アトランティスではないか?と言われてきた。その場所は、アイルランド、バハマ、アメリカ大陸、南極と様々だがプラトンの記述は、「ヘラクレスの柱の前方」それだけだった。
アトランティスは、ポルトガル・シルベスにあったという説がある。1755年に起きたリスボン大震災は、30メートルの津波が海岸に押し寄せリスボンを破壊した。地質学者が海底を調査したところ、1万1600年ほど前に何らかの天変地異があったことがわかった。プラトンが著書で示した、ソロンの時代の9000年前という年代とほぼ一致している。
シルベスは小高い山の上にあり、街に流れる川の海までの距離は約9.25km。アトランティスの運河と一致している。地質調査によれば、街の至る所にかつて水が引かれていたこともわかっており、三重の水路があったというアトランティスに近い。その他にも、1つの山から切り出した石材で街が作られているという珍しい特徴も一致している。
この街は、プラトンが示したアトランティスを特定する100ほどの情報の6割を満たしているという。ポルトガルに古代文明の形跡が一切ないことも、アトランティス消滅によって文明そのものが消え去ってしまったためかもしれない。
アトランティス伝説が生まれた経緯
アトランティスのことを最初に伝えたのは、哲学者プラトンだ。ただしプラトンの記述は、その150年ほど前にエジプトに旅をしたギリシャの偉大な立法家ソロンの話に基づいたものだ。
ソロンは、紀元前590年ごろにエジプトの都市サイスへ行き、ムートという女神を祀った神殿を訪れた。そして神殿の柱に刻まれていたアトランティスの伝説、エジプトやギリシャに侵攻した話を聞いた。残念ながらその神殿はまだ見つかっていない。
くさび形文字や象形文字の記録も、紀元前2400年以上は遡れない。おそらく大洪水が原因でそれ以前のものは、何もかも破壊され消えてしまったのだろう。ちなみにプラトンも地球全体が破壊されるような大洪水が起きて、すべてが消え失せてしまったと記している。
イギリスにあるウェルド・ブランデル角柱という石碑には、歴代のシュメール王の名前が記されている。それによると大洪水前の最初の10人の王が、40万年間も国を統治していた。これはアトランティスの伝説よりも明らかに前の時代だ。
初期の王たちは天から降りてきて、それぞれ何万年も統治していた。やがて旧約聖書の創世記やアトランティスの伝説のように都市は、洪水に飲み込まれてしまう。洪水後の王たちは、いずれも人間で何万年も国を統治することはなかった。
アトランティスの物語は、プラトンより遥か前の出来事と繋がっている可能性がある。
神話から繋がるアトランティスの正体
アトランティスに高度な技術や知識を誇る文明が栄えていたのならば、その後それはどうなったのか?地震や火山の噴火など自然災害で破壊されたのだろうか?それとも地球の外で何かが起きたのだろうか?
地中海に浮かぶ島、ギリシャのサントリーニ島。元々は大きな島だったが数千年前の火山の噴火で破壊され現在の姿になった。多くの人が、この島こそ幻のアトランティスだと信じている。それは、かつてこの島がほぼ円形の島だったからだ。
火山の噴火で破壊された島の南にあるアクロティリの遺跡。およそ3600年前に火山が噴火した際アクロティリは、火山灰に覆われイタリアのポンペイのようにそのままの状態で保存された。
アクロティリには、紀元前4000年ごろから人が住んでいた。当時の建物を見る限り高度な文明社会だったようだ。温水と冷水が使える3階建ての建物、4つの言語が話されていた証拠も残っている。サントリーニ島がアトランティスだったのだろうか?
天から降り立ったポセイドンが、地元の女と子供を作りアトランティスを築いたというアトランティスの伝説。そのような物語は、ヘルモン山など世界各地の山で生まれている。ギリシャ神話に登場するティタン族の女神アステリアの話もそうだ。ゼウスに言い寄られたアステリアは、逃れるためにウズラに変身し海に飛び込んだ。そして神秘的な島に姿を変えた。天から降りてきたものが島になったという伝説は、アトランティスに繋がっているのではないだろうか。
アトランティスは、実は島ではなく空飛ぶ宇宙船だったのではないだろうか。だからアトランティスは、世界中の様々な場所に存在したと伝えられているのだ。一晩の間に消えたのも、証拠が全く見つからないのもそれで説明がつく。
おそらく、古代の人々は各地でアトランティス人の示す宇宙の優れた文化と高度な技術に大いに刺激を受けて、それをマネようとしたのだろう。それで宇宙船が着陸した地点に次々と都市が築かれ、宇宙人が神と崇められたのだ。もちろん、この説には常識にとらわれない証拠探しが求められる。